Spainfan

トレド、美女の水浴場

トレドの脇を流れる大きなタホ河は、源を地中海寄りのテルエルとクエンカの山奥に発していて、下流は大西洋岸のポルトガルの
首都リスボンに注ぐ全長1000kmに及び、イベリア半島で最長の河となっておりますが,この豊な水量の河は沿岸の人々に大きな
自然の恵みを与えてきましたことから色々な伝説も残しています。
その中で、もっとも有名なのは8世紀の初め、最後の西ゴートの王ロドリゴとフロリンダの物語でありましょう。

 フロリンダは,当時の有力貴族であったフリアン公爵の令嬢でその美しさは吟遊詩人に謳われスペイン中で有名なほどでしたが,
溺愛していた父の公爵は娘が年頃になるにつれ心配になり、周りの興味本位な男の眼に触れないようにと宮殿から秘密の通路を
河縁まで造り,娘の好きな水浴ができるようにしておりました.

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 ある日、ロドリゴ王は、彼の毎日の楽しみであった狩猟に家来を引き連れ出かけました。しかし、その日は全く獲物が無く、彼は
不機嫌で帰路についていましたが、タホ河の辺まで来た時に馬が渇きを訴えたので部下達を残して土手を下りていったところ、
川べりから娘達の明るい笑い声がしてきました。 興味を覚えたロドリゴはそっとのぞいてみますと、数名の若い娘達が生まれた
ままの姿で水浴びをしていて、その中でも一際美しい娘にすっかり見とれてしましました。
彼女の金髪はまさに金の糸を束ねたようで、白く透明感のある肌は質の良い大理石のよう、青く大きな瞳はサファイアーのように
輝いておりました.

すっかり自制心を失った王は、驚くフロンダを構わず彼のマントに包みんで馬に乗せ、「今日は最後に素晴らしい獲物を得た」と
大喜びで城に戻りました.

娘の略奪に怒ったフリアン公爵は、娘を正妻として迎えるなら一度戻し正式に申し込むように要求しましたが、王は彼の要求を
全く無視して,逆に彼を辺境地のタリファ(Tarifa)の城主に左遷してしましました.

娘と自身の名誉に対する侮辱にフイアンは激怒して反乱を起こしましたが,所詮彼の武力では王には歯が立たず、苦戦した為、
対岸の北アフリカを支配していたイスラム教徒の武将ターリクに援軍を依頼したのです。

丁度,スペインに侵攻の機会を伺っていたターリックは、これは良い機会とばかりに,数千名の武将を引き連れ,ジブラルタル海峡を
渡り、ロドリゴの部隊と対戦し、すっかり堕落していたゴートの兵士を瞬く間にに打ち破って、そのまま,ほぼイベリア半島全域を
占領してしましまったのです。これからスペインの800年に渡るイスラム支配が始まります。

スペインは,たった一人の美しい娘の為に,イスラム化,アラブ化されてしまったのです。
今も昔も女性の魔力は偉大です。
歴史をも大きく変えてしまうのですから、、

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