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最後のアラブ王の悲劇

ボアブデイール(Boabdil)はその臣下にまで、Zogoibi(不運王)と呼ばれるほど、
幼少から多難で有ったようだ。
彼の母、アイクサ(Ayxa)は父アベン・ハッサン(Aben Hassan)のお気に入り
の妻であったが、父が囚われの身であったキリスト教徒の貴族の娘ゾライダ(ア
ラブ名Zorayda)を嫁取ったあとは遠ざけられるようになり、やがてゾライダは2人
の子供を持つようになると、自分の息子に王座をつかせようとの野望を持ち始め
王の寵愛を利用して邪魔なボアブデイールを亡き者にしようと企んで、母子に謀
反の嫌疑をかけ2人をコマレスの塔の一室に監禁してしまいます。
彼の身を心配した母アイサクは、忠実な家臣の助けで窓からボアブデールをつり
下ろして逃亡させグアデイックス(Guadix)に隠し、かれは父の追っ手の目を逃れ
ながら幼少を過ごします。


アルハンブラ宮殿ライオンのパテイオ

華麗なハレムであるアルハンブラ宮殿の王たちの生涯はそんなに甘いものは
なく、或るものは実の父親に殺され、有るものは叔父に、また兄弟にと血生臭い
ものであって、自分の地位を脅かすものはたとえ実子であっても容赦はしなか
ったようです。
特に悲惨だったのはアベン・ハッサンの第一妻アベンセラッヘス家の息子たちで
ライオンのパテイオの一部屋に呼び集められ全員が殺されてしまったそうです.
その部屋は今でもアベンセラッヘスの間として残っています.


アベンセラヘスの間

ボアブデールが22歳の時、アベンセラヘス家の援助の元に、父王から王座を奪い
取りますが、5年後父が死ぬまで、自身の父親と叔父ザガールと三つ巴の権力
闘争に明け暮れ、その翌年にはキリスト教徒とのルセロ(Lucero)の戦いで敗れ
カトリック両王の捕虜になって屈辱的な条件で釈放され、1487には再びグラナダに
戻ります. それもつかの間イスラム教徒の内紛に乗じたイザベラ(Isabel)女王と
フェルナンド王の軍勢に対して降伏して1492年アルハンブラ宮殿を明渡して800
年間に渡るイスラム教徒のイベリア半島支配にピリオドを打つことに成ります.

彼は生い立ちのせいか、王座についても慈父深く、いつも憐れみの心を持って治世
を行ったために、臣下には非常に愛された王では有ったようですが、それがまた
結果的には彼の弱点であって、王国を敵に引き渡す運命を背負うこと
になってしまいます。

グラナダの王国をあとにして町が見えなくなる最後の曲がり角で,ボアブデールは
目に涙を浮かべたと言われます.それを眺めた母のアイサクは、冷たく言い放った
そうです。
“女のように泣くが良い、、男として自分の王国を守れなかったのだから,,”
この場所は現在も”モーロ人の最後のため息“(Ultimo suspiro delMoro)と
呼ばれています.

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