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Spainfan


復活祭(Semana Santa)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クガモンギー

 <再生>を復活と仮定するならば,スペインのそれは<Semana Santa(聖なる週間)>=復活祭のことだろう.
キリストのエルサレムでの受難に合わせて信者達が街中をパレードするのだ.ある者は聖像の山車を担ぎ,また
ある者はおもりの付いた靴を履き,別の者は素足で十字架を背負い,キリストの受難を再現・体現しながら復活の
日を迎えるのである.彼らの衣装は教区ごとに決められた色で統一してあり,中世の装束を身に纏う(K.K.Kは,こ
れを真似たものである).そして期間中,列車のダイアのように組まれたスケジュールに従い各教区ごとにパレード
をするのだ.

 留学地であるスペインのCastilla y Leon地方のValladolid県に私が着いたのは,3月も終わりの頃だった.まだ生
活自体にも慣れず勉強もはかどらず,といった時期にこの復活祭は始まった.そして学校は休みになり店も閉まっ
た.みんな祭り一色になるのだ.それまでの数週間は学校に行って授業を受け,クラスメートと談笑し,帰宅後,宿
題してとタイムレコーダーの様に動いてきたのに...旅慣れているヨーロッパからの学生仲間は旅行に行くと云っ
て出掛けてしまった


 

「何をしよう...」なにをするでもなしに休みの初日にぼーっと惰眠を貪っているとお声がかかった.同胞の女子大
生のユリが一緒にパレードを見に行こうと云うのである.

彼女は,日本の大学でスペイン語を専攻しており,卒業テーマのひとつとしてスペイン各地の復活祭を考えていると
いう.私にしてみれば正直なところ『気が乗らない.何が楽しくて山車に付いて回るのだ?私は横浜育ち.港祭りは
あるけれど記憶の中では,一回しか行ったことがないし.博多どんたくにもねぶた祭りにも興味がないのに.ついで
にキリスト教徒でもない.』といったところであったが,メンバーの中にちょっと格好いいドイツ人のインテリ君がいた
ので,山車ではなくインテリ君に付いていくことにした.役所でパレードのスケジュール表を貰い,目当ての聖像が担
ぎ出される教区をチェックして,今日は昼.明日は夜中と,他の観光客と共に練り歩くことにした. 


 Valladolidの復活祭は,スペインでもっとも有名なSevillaのものと違い,終始,静寂がつきまとう.Cofrad誕 (信者組
合員.日本で云ったら町内会青年団だろうか)のパレードに賛辞の声が飛ぶでもなく,泣き女のような集団ヒステリッ
クおばさんを見ることもない.沿道を過ぎゆくパレードを静かに見守る人々.あとは,観光客のカメラのシャッター音が
うるさく感じられるだけだった.ひたすら歩き回る日々の中で私たちは無言でいるには長すぎる時間を共有し,多くの
ことを語りあった.ユリが熱心にメモを取り,写真を撮る.元来,仕切屋の私はインテリ君を通訳にして,次は何処へ
行くか,撮影に適した場所はあるのかと情報を集め,立ち働いた.そうこうするうちにそれまでの数週間,遠慮がちに
接してきた仲間たちの間に共通の目的を持つ身内意識のようなものがでてきた.言葉が足りなければ身振り手振りも
交えて意思の疎通を始めた.「映画を見に行こう.」「勉強会をしよう.」周りの学生より少し年上で,それが引け目のよ
うになっていた私は,なんだかワクワクしていた.

 
最終日,全ての教区が役場前のPlaza Mayorと呼ばれる公園に,甲子園球児よろしく入場し集まる.三角帽は外され,
女性達の黒いレースのベールは白に変わる.キリストの受難は終わり,復活するのである.市長だか神父だかのうやう
やしい演説の後,最後には平和の象徴とされる白鳩が一斉に放たれた.そして,青い空を見上げている私も学生として
の再生を迎えることになるのだった.

  

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