スーパーマーケット(supermercado)
私は日頃からジャラジャラと小銭を詰め込んだ重たい財布を持ち歩くのが嫌いだ
.特に海外のコインは日本のそれに比べて重くて大きいし,帰国時に日本円に戻せな
いのでコインの処分に頭を悩ますことになる.そこで,滞在中からなるべく小銭を余
らせないように心掛けるのだが,スペインでは時として面白いやり取りを体験する.
ある時,スーパーで930pta(ペセタ)の買い物をして,1030ptaを出したら「これ
は余計だよ.」と30ptaを返されてしまった.私は100ptaコインのお釣が欲しかった
のだが相手は,『この外国人お金の区別がついてないな』程度に思っているらしかっ
た.レジの女の人は子供に教えるかのように50ptaコインを1枚と5ptaコインを4枚=7
0ptaのおつりを渡してくれた.少し馬鹿にされたようで嫌な気持ちになっていたが,
しばらくして計算の仕方が違うことに気がついた.私たちは一般に引き算でお釣を考
えるが彼等は足し算を使う.(実際,彼等は引き算が余り得意ではないと本人達が云
っていた)つまり930ptaの買い物で1000pta出すと1000までいくら必要かと考える.
(940...990,1000で70ptaとなる)1030-930=100にはならないし,彼等にしてみ
れば私が小銭を嫌ってるなんてことはわからないし,説明したところで『日本人って
めんどくさいこと考えるのね.』と思うだけだろう.

実のところ,何と思われようがかまわないし,彼等がどんな計算の仕方をしていて
も関係ないけれど,おつりが貰えないとなると納得がいかなかった.
「あのぉ〜」と謙虚に声を掛けても「Vale,Vale」(いいの,いいの)と,まるで
犬でも追い払うかのような仕草でかわされてオシマイ.そこでさらに突っ込んで『で
もそれはおかしいんじゃないんですか.』と云うべきだと思うのだが云えない.矛盾
しているが切り出せないのである.それは言葉が拙いからでも自己主張ができないか
らでもなく,たまに逆のパターンがあって,その時にニンマリとダンマリをきめこん
でしまうからなのである.
例えば925ptaの合計で5000pta札なんて出すとまず嫌な顔をされる.そして次に「25
ptaはないか」と聞かれる.(コインの種類の関係で時として引き算でも計算するら
しい)「ない.」と答えると,お釣が4100pta貰える.『あれ?多いよ.』と思って
も『この間おつり貰わなかったからいいか.』になってしまうのである.しかもこれ
は別に私が異国の民だから起こることなのではなく,スペインでは日常茶飯事なので
ある.(でもやっぱり腑に落ちず,罪悪感を持つことがある.が,返したことはない
)
要は,めんどくさいの一言.彼等のアバウトな気質がお金に関しても出ているので
はないかと思う.
大手のデパートやホテルなどは別だが,町のスーパーなどではバーコード式のレジス
ターがあってもなくても関係ない.どうせ雇われの身だからと,割り切っているから
だろうか.
個人経営のBarなんかでも店主はあまりまけてくれなくとも従業員のお兄ちゃんたち
は気安くまけてくれる.この場合,めんどくさいというよりもサービスもしくは,そ
の時の気分次第ということで毎回値段が違うことが,ままある.
ちょっと気の利いたお店なんかだと小銭に変わってキャンディーをくれることがある
.(でも,お金は戻ってこない)
毎回不思議なのは,どうやって最後の〆をしているのかということ.まさか,レジ
打ちのスタッフ全員が毎日毎日『まぁ,いいっか.今日も合わないや.』で済ませて
いるわけではないと思うのだが...
彼等に『日本では1円合わなくても帰れないんだよ』なんて云っても信じてもらえ
ないだろうが,云ったとしても,きっと『そんなに神経質に暮してたら長生きしない
ぜ.』などと云われてチャンチャンとなるのが目にみえているからなにも云わない.
そして今日も『ニンマリできればいいか.』と思ってしまう.私はここスペインに置
いては時として細かくてめんどくさい性格を捨てることにした.