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Spainfan

暖房費 1.28.01
今年のサラマンカの冬は去年に比べて暖かいようだ。まだ雪が降らない。
気温は0度から4−5度くらいで0度以下になることが少ない。もっとも街角に表示されている。温度計はどの程度
信頼できるか分からない。同じ日の同じ時間でも温度計のある場所によって温度の表示が違う。
我が家はセントラルヒーティングで外がどんなに寒くとも部屋の中はとても暖かい。外出から帰ってくるとほっとする。
このところ毎日曇り空で時々激しい雨が降る。サラマンカより西南に100kmくらい下ったシウダ・ロドリーゴでは何
回も河が氾濫して街に水があふれたとかといったニュースも流れた。トルメス河も最近は水量が増してさすが頑丈そうな
ローマ橋も苦しそうに頑張っているように見える。

先週、家主のセラフィンが電話をかけてきて一寸話したいことがあるので何時お邪魔したらいいかと尋ねてきた。翌日に
来てもらったのだが用件はこの部屋の暖房費が異常に高いというのだ。一応契約ではアパートの一般経費はもちろん暖房費、
熱水、冷水の費用は家主の負担となっている。それらの経費明細の紙を一杯抱えてこれこの通りあなたのところの暖房費が
かさんで困るというのだ。一度にまくし立てられてもこちらはどうもよく理解できない。一つ一つ説明を求めて気が付いた
ことは一昨年と去年との比較において暖房使用時間が4倍になっている。一昨年の10月から12月末までの使用時間が
400時間くらいで去年の同期は1580時間というのだ。一昨年の年末は此処にいて、去年の年末は日本にいたので同じ
状況にありながら4倍にもなっているのは理解できない。大体去年は計量器が壊れていて部屋の中のスイッチとこの中央計
量器がきちんと連動しなくて何度も管理人であるタクシー運転手のカルロスに修理してもらったのだがしばらくするとまた、
だめですっかりまあ、スペインてのはこういういい加減なところがあるんだと思っていた。
部屋のスイッチをオンにしてもオフにしても計量器はまわっていた。
だから、セラフィンには大体このスイッチと計量器が信頼できないから何かの間違いだろうというとセラフィンは早速カル
ロスを呼んで来て調べ始めた。カルロスによると昨年9月に計量器を新しく取り替えたので間違いはない筈だという。ちな
みに部屋のスイッチのオン・オフを繰り返して計量器と連動しているのを確かめると「な、間違いないだろ?」と何か勝ち
誇ったようにうっすらと笑みを浮かべて確認を求めてくる。こちらは苦笑いしながら「わかったよ、わかったよ」。

さて、セラフィンが部屋の中に戻ってきて「暖房のつけっぱなしはとても我慢がならない。他の部屋の実績とくらべてみても
あなたのところは異常である。外出する時には暖房のスイッチを切って出るように、また夜は寝る前にはオフにして寝るよう
に、きめ細かくスイッチを切るようにしないと暖房費が高くてとても困る。」というのだ。
去年の石油の値上がりで一時間あたりの暖房費が51ペセータ(約30円)から今年の冬は一時間あたり76ペセータ
(約45円)に値上がりしているという。また、熱水が立米当たり326ペセータ(約200円)から513ペセータ
(約300円)に冷水が立米当たり89ペセータ(約54円)から112ペセータ(約67円)となっているという。
その他一般経費なども値上がりしていてエレベーター、ビルの清掃代など負担額が大きくなってきておりこの部屋の維持のた
めに約30数万ペセータの請求がきている。このうち未払いが13万ペセータあるがその大部分は暖房費である。どうしてく
れるんだ、といった口調である。
なるほど、そういうことだったのだ。我が家では暖房が効いて誠に結構で暑いくらいの時には窓を開け放して外の空気を入れ
ていたくらいである。
何がしかの費用分担は考えましょうということでとりあえず時間が来たのでお引き取りいただいた。

三日くらい経って又ひょいとセラフィンが我が家に現れた。この間は話が途中だったのでその話の続きをしに来たという。
もう分かったよ、何がしかの分担はするよ、というつもりで応対に出てみると、紙切れを出して「あれから計測してみるとも
う25時間も暖房をしている、一時間あたり76ペセータだからもう1,900ペセータも使っていることになるもっと節約
して欲しい」というのだ。そこで一寸待ってくれ、「あれから丸三日たって72時間たっている、そのうち暖房していたのが
25時間というのは約三分の一で、一日当たり8時間の暖房ではないか(本当はもっと使っていた)、最近の寒さじゃ、このく
らいはまあ許されるのではないか、以前に比べればすっと倹約しているよ。」どうだ?というと、セラフィンは返答に困った
風で「とにかく外出する時とか、寝る前には必ずオフにして節約してくれ」という。
とにかく部屋のスイッチがオンになっている限り計量器は回りつづけているわけだ。去年のスイッチが馬鹿になっていたこと
からあまり注意することもなくいつもつけっぱなしにしていたものだ。だから「暑い時には窓を開けて外の空気を入れていた
のだよ、あっはっはっはあぁぁ、」というとセラフィンもつられてちょっと情けないような顔で「あっはっはっはぁぁぁぁぁぁ」
と笑う。
また、暑い時には部屋のあちこちに立てられている暖房パネルの蒸気を通す栓を絞ったりしていたのだが、新しく中央の計量
器を取り替えたら、その時に「取り替えたから部屋のスイッチをオン/オフするように」ともう少し早くいってくれればいい
のに今になって使いすぎている、こんなに金がかかっていると言われても、もうのどもと過ぎて食べてしまったおいしい料理を
あれは高かったのだと後からいわれてもどうしようもないではないか、というと、素直に「そういう点ではワシにも責任がある」
と人の良さが表れてくる。
その後、「ずっとあんたにはこの部屋に住んでもらいたいと思っているよ、」とか「他のアパートに住んでいる人たちにもいい
家主でありたいと思っている」とか、「俺は寛大で人付き合いもいいし人に憎まれるようなことは今までした事もないしこれか
らもしないように努めている」とか盛んにやさしさを売り込んでくる。
まあ、こちらも「あんたの言う通りこちらもいい関係でずっとお世話になるつもりだよ、だから何がしかの費用の分担には応じ
るつもりだ」というとニコニコ顔になって帰っていった。

サラマンカのホームステイしている人たちの話を時々聞くのだが大部分の人は「暖房が夜は10時には切られてしまい夜遅く勉強
していると寒くて仕方がない」とか、シャワーを一寸長く使っていると外から「もういい加減にしなさい」と叱られるとか言っ
た話をよくきく。
此処では殆どの人がセカンド・ハウスをもっていて裕福で、鷹揚で、ちょっといい加減で住みいいところだと思っていたのだが、
どうしてどうして、結構慎ましやかに生活しているようだ。贅沢が身についてしまっているのはどうやら日本人の方らしい。
以上。


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