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 復活祭
今年のセマナ・サンタは4月12,13、14日の木曜日、金曜日、土曜日が
ハイライトで15日が復活祭である。例年サラマンカのセマナ・サンタは根気
よく見て回っており、もう今年は3度目である。だから今年はバジャドリッド
のプロセシオンを日帰りで見に行ってきた。

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15日の復活祭の日は朝とても穏やかな陽光が射して家に居るのももったいな
い気がしてミサに出かけることにして家を出た。
サン・エステバン修道院の脇を通り抜けてサン・マルコ通りに出たところでプ
ロセシオンの先導集団にぶつかった。それをやり過ごしてアナヤ広場に出てみ
るとまだ人垣ができてなくてこの調子だと今年はエンクエントロの式典がよく
見られるかも知れないとカテドラル側の石段の日当たりの良いところに座り込
んで日向ぼっこしながら待つことにする。
エンクエントロというのは「出会い」と言う意味で長年の伝説によるとイエス
が復活して最初に会ったのが聖母マリアだというのだ。これは聖書には何も書
いてないが誰もがきっとそうに違いないと信じていつの間にかこうした行事が
行われるようになったということらしい。

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やがて先導隊に導かれて聖母マリアの山車(Paso)が右手からエル・トスタド
の坂道を上がって現れた。この山車を担いでいる人は全て女性だ。山車の後ろ
にいる楽隊は今日は晴れやかな曲を奏でていて今日の天気にぴったりだ。しば
らくして左手から今や空になったガラスの棺の山車が現れ、今は大学の文学部
が使っているアナヤ館の前の石段に位置を占める。
前の石段に後ろから舞台の様子を見ようとする人が割り込んで立つとこちらも
立たざるを得ない。そうすれば僕の後ろで無邪気に僕の背中に寄りかかって見
ている小さな子供達が又見えなくなる、さてっと、思っていると隣の人がその
立っている人の袖を引いて「後ろの人が見えないよ」と声をかけてくれる。
この若者は首をちょっとふってそそくさと出ていってしまった。
すぐにその声をかけてくれたおっさんと心が通じ合う。

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やがてチャッロ(サラマンカ原住民)が民族衣装に身を固めてカスタネットなど
鳴らし、踊りながら会場に入ってきた。今日はこういうことになろうとは思って
も見なかったのでカメラを忘れてきてしまった。が、しかたがない。
そしてチャッロの後から右の胸に傷跡はあるが死にうち勝ったイエスが右手を挙
げている山車がいよいよ登場だ。
そして中央に少しずつ歩み寄ると今までずっと止まって待っていた聖母マリアの
山車も少しずつ歩み寄っていく。
二つの山車の先頭がふれあうほどに接近したとき、なんと両方の山車が互いにお
辞儀をするではないか! 一度、二度そして三度まで。山車の前方の列が腰をか
がめ後ろの列の方が山車を持ち上げて挨拶をしている。そしてアナヤ広場に埋め
尽くした人たちが一斉に拍手を送る。

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僕などはすぐに感情移入しちゃう方だから、何かぐっと胸に迫るものがある。
自分の母親に向かって「女よ」と言ったイエスがやっぱり人間的な感情を持って
いて復活したら最初に母親の所にきて死にうち勝った喜びを伝えに来たのだろうか。
その時のマリアはどんな気持ちで我が子をみたのであろうか。
この時のイエスは、以前からもそうだったのだろうが、もう普通の人間界の人物
というのはとっくに超越してしまっていてマリアであろうがバラバであろうが、
それらは全て神が創造した人であって、肉親の情のようなものをもってマリアの
前に現れているのではないと思うのだけど観衆がみんな大きな拍手を送るとつい
理解してしまうのだ。
以前からマリア信仰が強いなあと感じていたのだけど、この式典が終わって又、
町の中を行列して行き過ぎる時、道の両側からマリアの山車に向かって一斉にみ
んなが拍手を送る。
何となく今日はみんながやっぱり晴れやかな気分でいるような雰囲気がある。
今日の復活祭に先立つ受難の苦しみの行列が一週間も続くとこの日の喜びが倍加
されるのだろうか。

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そういえば昨夜14日の夜、ルア・マジョール通りで行列を見ていて一通り見送
った後、家に帰ろうとすると後ろから突然「セニョール・ジャヒーマ」と呼ぶ声
がして振り返るとガルシア・サルサ先生である。
しばらく雑談をしたのだが、
「先生、僕もこの山車を担ぎたいんですけどどうしたら担げるんでしょう?」
「それは止めときなさい。すごーく重いです。」といって僕の肩を思いっきり両
手でおさえてきた。
「いや、このくらいなら、なんとか。。。。」
「それに山車を担ぐためには信徒団体に年額いくらかの金を払ってメンバーにな
らなければなりません。なに、大したことはなくて年間三千ペセータくらいかな
あ」という。
「あなたは背が高いから沢山払って、より重く担がなければならないでしょう」
「じゃあ、やっぱりやめときます。」
てな話しをしながら周囲を見回していると、
「この雰囲気はどうですか? これは野外オペラです。カテドラル、教会の鐘楼、
三角帽子に色とりどりの衣装、そして私たちは観衆です。観衆も一緒になって楽
しむオペラですよ。」という。
「うーーん、なるほどぉー」
大学の先生というのはクールでうまいことを言う。
今年のセマナ・サンタは例年に比べて暖かな日々であったがやはり夜になると冷える。
何か暖かいものが食べたくなってそこそこに話を切り上げて家に帰った。

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